僕が作った架空のデータで練習しましょう。結果についてはご意見があると思いますが、統計学の練習のためのサンプルですのでご了承ください。信頼区間の求め方は母平均の区間推定(母分散が未知の場合)をご覧ください。
例題)COPDの男性患者10名を対象にして、入院時と入院2週間後に6分間歩行距離(m)を計測した。両時点での歩行距離に差があるか有意水準5%で検証せよ。
データの準備と要約
Rを使って10名のサンプルを作成します
計測結果(pre: 入院時、post: 2週間後)
ID <- 1:10
pre <- c(330, 410, 410, 315, 395, 290, 250, 335, 302, 340)
post <- c(350, 420, 408, 333, 445, 312, 275, 312, 295, 395)
dat <- data.frame(ID, pre, post)
head(dat)
対応のあるデータのグラフ
#表の準備
x <- c(1.1, 1.9)
dat2 <- t(dat[,2:3])
print(dat2)
グラフ(dat2を使用します)
matplot(
x, dat2,
type ="b", lty=2,
xaxt="n",
xlim=c(1, 2),
xlab="", ylab=""
)
name <- c("入院時", "2週間後")
axis(side=1, at=c(1.1, 1.9), labels=name)
仮説
帰無仮説:入院時の歩行距離と2週間後の歩行距離に差はない\( \quad (pre=post)\)
対立仮説1:入院時と2週間後の歩行距離の差の平均は0ではない\( \quad (pre \neq post)\)
対立仮説2:2週間後の歩行距離は入院時の歩行距離より長い\( \quad (post – pre > 0)\)
対立仮説1を証明する場合には両側検定、対立仮説2を検証する場合には片側検定となります.入院治療の効果を判定する場合には、本来であれば対立仮説2になるのですが、対立仮説1で検証している報告が多いようです.
t検定
仮説1の両側検定
sa <- dat$post - dat$pre
t.test(sa)
p>0.05で有意差なし・・・という結果になりました
仮説2の片側検定
t.test(sa, alternative="greater")
p<0.05で有意になりました
結果のみよければ、ここまでです
ここからはもう少し深く勉強してみましょう
統計量
2週間後 – 入院時: \(post-pre\)
(2週間後 – 入院時)の平均値:\(\bar{x}\)
(2週間後 – 入院時)の母平均値:\(\mu\)
(2週間後 – 入院時)の不偏分散: \(s^2\)
#標本平均
mean(sa)
#標本不偏分散
var(sa)
母分散が未知の平均値の差の検定なので、t統計量を使用します (\(\sim t(10-1)\)).また帰無仮説では \(pre=post\) を仮定しているので \(\mu = 0\) とします.
\(t=
\dfrac{\bar{x}-\mu}{\sqrt{\dfrac{s^2}{n}}}=\dfrac{16.8-0}{\sqrt{\dfrac{579.733}{10}}}\)
標本不偏分散の求め方
$V[A – B] = V[A] + V[B] – 2cov(A, B)$ より
var(dat$pre) + var(dat$post) - 2*cov(dat$pre, dat$post)
t値の求め方
t <- mean(sa)/sqrt(var(sa)/length(sa))
print(t)
Rの検定結果に記載してあるt統計量と同じ値になりました。この統計量(t値=2.21)を利用して検定してみましょう
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